おわりに
市民アセスの会は、本提案書において、第十堰事業にかかわる環境アセスメントにおける2つの代替案を具体的に提案した。それらは、環境に最大限の配慮をした、しかも十分に実施可能な代替案であり、当会が目指した環境と治水の統合という目的に適ったものであると考える。したがって、建設省あるいは第十堰環境調査委員会において検討されるべき水準を、十分に達成しているものと、自負している。それゆえ、第十堰事業にかかわる環境アセスメントは、本提案書における代替案についての提案を十分に踏まえることなくしては、適正なアセスメントたりえないと、確信している。
本事業の環境アセスメントは、全国的に見ても大きな注目を浴びている。国際影響評価学会日本支部長の原科幸彦東京工業大学教授は、「徳島県、吉野川第十堰改築事業のアセスがアセス法を適用して行われる。これは事業アセスとして行われるが、事業アセスでも事業者が実施可能なさまざまな代替案を検討することが必要である。」とした上で、「これだけ関心の高い事業に関しては早期段階からの情報提供が必要とされるから、検討すべき代替案は方法書段階から明示すべきである。」(原科幸彦「戦略的アセスメントの導入を」、建設省広報誌「建設月報」、1999年3月号、51頁)と主張されている。また、方法書における「評価項目の選定は、その事業計画に対してどのような代替案が考えられるかによって変わってくる。したがって、方法書にもその検討対象となる代替案を明記する必要がある。」(原科幸彦「吉野川で試される環境アセス」、『朝日新聞』、1999年2月23日)として、方法書において代替案が明記されるべき理由を明快に指摘されている。
当会は、このような原科教授の主張に、全面的に賛同するものである。そして、以下の3項目を、現時点で具体的に提言したい。
(1)建設省は、第十堰事業にかかわる環境アセスメントの方法書において、検討対象となる複数の代替案を明記すること。そのためには、第十堰環境調査委員会において、代替案の比較・検討を含めて、方法書作成作業を進めること。
(2)今回当会が提案した代替案2案、及び今後市民から代替案が提案された場合にはそれも含めて、方法書作成作業段階において、十分な検討を行うこと。
(3)方法書に記載された代替案に関する市民からの意見を、双方向の意見交換等を通じて、スコーピングの過程で十分に反映させ、環境アセスメントの合意形成機能を最大限に発揮させること。
市民アセスの会は、当会が提案した代替案2案及び先の3つの提言を、建設省が真摯に受け止められ、適切な環境アセスメントを実施されることを、強く要望いたします。
代替案検討委員会
粟飯原治仁 石井愃義 伊賀公一 上原克之
内山敏子 栗栖 聡 立石千鶴 津川博昭
徳永英樹 中嶋 信 新居照和 野々瀬徹
宮崎信也 村上哲生 森本康滋 吉野三郎
吉野川第十堰事業環境アセスメントにおける代替案の提案
−環境と治水の統合を目指して−
1999年4月12日印刷
1999年4月13日発行
吉野川第十堰市民環境アセスメントの会
代表世話人 石井愃義
徳島市中徳島町2丁目102 野々瀬気付 TEL 088-622-7711
参考文献
1. 環境と開発に関する世界委員会『地球の未来を守るために』(福武書店、1987)
2. 環境法政策学会編『新しい環境アセスメント法―その理論と課題』(商事法務研会1998)
3. 建設省河川法研究会『改正河川法の解説とこれからの河川行政』(ぎょうせい、1997)
4. 河川審議会答申「今後の河川環境のあり方にについて」1995
5. 建設省「環境政策大綱」1994
6. 原科幸彦『環境アセスメント』(放送大学教育振興会、1994)
7. B・サドラー、R・フェルヒーム(原科幸彦監訳)『戦略的環境アセスメント』(ぎょうせい、1998)
8. 明治学院大学立法研究会・行政手続研究会編『環境アセスメント法―合理的意思決定の法システム』信山社、1997)
9. 環境庁企画調整局企画調整課『環境基本法の解説』(ぎょうせい、1994)
10. 環境庁環境アセスメント研究会監修『環境アセスメント関係法令集』(中央法規、1998)
11. Christopher Wood, Environmental Impact Assessment ; A Comparative
Review. Longman Scientific & Tecnical. 1995.
12. 建設省四国地方建設局「第十堰改築事業代替案について」1996.12.6.
13. 「参議院議員竹村泰子君提出 徳島県吉野川第十堰改築計画等に関する質問に対する答弁書」内閣参質140第12号 1997.7.11.
14. 同 内閣参質141第3号 1997.12.19.
15. 同 内閣参質142第2号 1998.3.31.
16. 同 内閣参質142第18号 1998.8.21.
17. 吉野川シンポジウム実行委員会「第十堰老朽化問題に対する見解〜環境と治水の両立を目指して〜」 1998.5.22.
18. 吉野川シンポジウム実行委員会「建設省の水位計算への指摘に対する見解」1998.5.12.
19. 日本自然保護協会「利根川河口堰の流域水環境に与えた影響調査報告書」(日本自然保護協会、1998)
20. 日本自然保護協会・長良川河口堰問題専門委員会「長良川河口堰事業の問題―第3次報告―長良川河口堰運用後の調査結果をめぐって―汽水域の破壊と河川の湖沼化 ―」(日本自然保護協会、1996)
21. 建設省中部地方建設局・水資源開発公団中部支社「長良川河口堰調査報告書」1995
22. 建設省中部地方建設局・水資源開発公団中部支社「平成7年度 長良川河口堰モニタリング年報」1996
23. 建設省中部地方建設局・水資源開発公団中部支社「平成8年度 長良川河口堰モニタリング年報」1997
24. 原科幸彦「戦略的環境アセスメントの導入を」、「建設月報」1999年3月号
25. 原科幸彦「吉野川で試される環境アセス」『朝日新聞』1999年2月23日