吉野川第十堰事業環境アセスメントにおける代替案の提案

         −環境と治水の統合を目指して−

          吉野川第十堰(だいじゅうぜき)市民環境アセスの会 1999413

 はじめに

 

吉野川第十堰市民環境アセスメントの会(以下、「市民アセスの会」と略記)は、建設省の吉野川第十堰事業にかかわる環境アセスメントにおいて、代替案の比較・検討が不可欠であることを、これまで主張してきた。それに対して建設省は、「本アセスメントは事業アセスメントであるから、代替案を比較・検討する必要はない」との見解を表明している。しかし、当会としては、このような見解は妥当ではないと考えている。事業アセスメントであれば、事業計画の策定段階においても、それに続く環境アセスメントの段階においても、代替案の比較・検討を一切行わなくても良いとする解釈は、環境政策の観点からすれば、事実上、事業者は、事業にかかわる意思決定の過程でほとんど環境への配慮をしなくても良いという立場の表明に他ならず、このような解釈は到底許されるものではない。かかる解釈は、諸外国において、戦略アセスメント(あるいは計画アセスメント)のみならず、事業アセスメントにおいても、代替案の比較・検討を義務づける規定が数多く見られ、また実際、方法書、準備書、評価書等に代替案の検討過程が記載されている事実を、全く無視するものであり、世界の環境アセスメント制度の常識に反するものである。

市民アセスの会が、環境アセスメントにおいて代替案の比較・検討が不可欠であると主張してきたのは、環境政策の理論、世界の環境アセスメント制度の現状を踏まえた上でのものであり、その主張には十分な根拠があるものと考えている。

当会は、本来は、河川整備計画レベルでの計画アセスメントにおいて、流域全体を視野に入れて代替案の検討を行うべきであると考えている。しかし、今回の提案は、あえて事業アセスメントの枠内に限定して、代替案の提案を行うものである。

 市民アセスの会の今回の提言書は、環境アセスメントにおいて代替案の比較・検討が不可欠であるという当会の従来の主張を理論的に根拠づけた上で、さらに、建設省の原案である可動堰案に対する代替案を、市民の側から具体的に提言することを目的とするものである。

第1章において、われわれは、環境政策の基本原則として、環境負荷の最小化という視点を確認し、かかる基本原則からして、代替案の比較・検討がこれからの環境アセスメントの核心に位置づけられるべき手法であることを論証する。

第2章から第4章においては、市民アセスの会が提案する代替案が、どのような論拠に基づいて作成されるに至ったかを、論理的な展開に即して、論証する。まず第2章において、第十堰事業の事業目的にかかわる議論を行った上で、第3章において、建設省が実施した代替案の比較・検討が孕む問題点を指摘する。続いて第4章において、市民アセスの会が提案する代替案を作成するに当たっての、基本的な枠組み、評価基準を明確にした上で、当会が提案する代替案を絞り込み、最終的に2つの代替案を選択する。

第5章、第6章では、以上の議論を踏まえて、具体的に市民アセスの会が提案する2つの代替案の妥当性を検証する。まず第5章において、治水、経済性、社会的影響、工期といった観点から、続いて第6章では、環境の観点から、それらの代替案に関する現時点における評価をそれぞれ行い、それらが、環境アセスメントにおいて代替案として比較・検討されるにふさわしい内容を有していることを、論証する。

第7章では、第5章,第6章の議論を前提として、2つの代替案を総合的に評価し、その基本コンセプトを明確にし、それらを市民アセスの会の代替案として提案する。

 最後に、以上のような論拠によって、方法書において代替案を明記すること等の3つの具体的な提言を行う。

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