第4章 市民アセスの会代替案の設定と選定

 前章で、建設省による代替案の検討には多くの問題が含まれていることを確認した。本章では、アセスの会代替案の考察を開始する。本会は、代替案というものが、突然具体的に設定されると言うことはあり得ないと考える。それゆえ、まず、代替案設定の前提となる基本的な考え方を示し、それに基づいて、可能な代替案を設定し、さらにそれをよりよいものに絞り込むという形で、段階を追って、議論を深めて行くつもりである。

 

 1. 代替案設定の基本的考え方

(1)建設省代替案がもつ問題点に抵触しない代替案とする

 前章で、建設省代替案の治水計画上の問題点としては、直堰の改築位置を13kmの位置にする不合理性、現位置で斜めの堰に改築するという計画の不合理性、現堰の補修が代替案として検討されていないこと、引き提案は現堰を前提に検討すべきであること、以上の4点が指摘された。また、建設省代替案の比較・検討の方法における問題点としては、工費評価、治水評価、社会的影響評価、維持管理費、環境に対する影響についての5点が指摘された。

したがって、当会の代替案を設定するに当たっては、これらの問題点に抵触しないことを、前提とする必要がある。

(2)代替案の設定には基準が必要である

 前章で、建設省の代替案の検討の問題点は、代替案それ自体の設定が適切でないこと、代替案を比較する場合の評価項目が一貫していないこと、代替案を比較する場合に、可動堰とその他の代替案を公平に扱っていないこと、環境評価を一切入れていないことなど、多岐にわたることがわかった。このような、建設省代替案の問題点を解決するには、代替案の設定に、上記の問題点などを解決する客観性のある基準を設けることが必要である。

(3)代替案設定のための基本哲学が必要である

 建設省の代替案の設定は、何を基準にして代替案を設定するのかという基本哲学が存在しない。われわれは、個別の代替案の設定のためには、それに先立って、望ましい代替案であるための基本哲学が必要であると考える。

われわれは、以下の4項目を、代替案設定のための基本哲学と考える。

 (1)環境負荷が小さい、さらには環境がより良くなるような代替案

 市民アセスの会代替案は、現堰付近の環境(生態系などの自然環境、景観・触れ合い・環境学習・余暇活動の場)をよりよくするという視点、地球温暖化などの新たな環境問題への対応(化石燃料を大量に消費しない治水技術)、環境資源(エコ・ツーリズム等の観光資源としての価値、漁業資源)の保全・発展継承、文化(自然)遺産の継承を求める。

 (2)持続可能な治水事業への転換となる代替案

 可動堰のような巨大かつ複雑、ブラックボックス的で、しかも老朽化が早いハードな技術ではなく、地域が自らの力で維持できるような治水技術(地場の材料や技術)を選択する。公共事業にしても環境問題にしても、将来世代のことも含め、百年単位で考える時代となっている。ゆえに、このような時間スケールで考えるとき、今後予想される高齢化社会の到来や、国や地方の財政危機の深まりにより、巨額の維持費を捻出する必要のない事業を今から選択しておく必要がある。機械設備など短期間に更新する必要のある施設は、維持が困難になり、故障や事故の危険が大きくなる可能性もある。将来にわたって安全が維持でき、かつ、自然の川の摂理にかなった治水対策(維持管理が容易で、老朽化しないもの)を求める必要がある。

 (3)持続可能な吉野川流域づくりへの転換となる代替案

 可動堰案は事業開始から約20年を経て、建設省の河川行政の変化に対応しえなくなっている。建設省も世界も、治水技術の新しい流れは、流域全体で「健全な水循環系の構築」を目指す、ソフト治水である。本来は、持続可能な吉野川流域づくりをも視野に入れて、新河川法の下での河川整備計画における計画アセスメントとして、代替案を考える時代となっているのである。

 (4)情報公開と市民参加による合意形成を可能とする代替案

 建設省による第十堰関係の調査などの情報の公開が必要である。市民と行政の合意形成のためには、環境と治水とが統合した事業を探る、幅の広い代替案が必要である。市民と行政が、代替案の検討を通じて、治水についても環境についても共に真剣に考え、議論し合い、協働しながら、市民も十分に納得し、行政も誇りを持って推進することのできる、誰からも祝福される事業が決定されることが、本来の望ましい姿であると考える。

 われわれは、以上の4つの基本哲学に基づき、代替案策定の基準をつくる必要があると考え、以下のような基準を設定する。

 

 

 2. 代替案設定の20の基準

(1)代替案設定の基本哲学から基準を考える

 (1)環境負荷が小さい、さらには環境がより良くなるような代替案を設定するためには、「堰事業にかかわる環境影響評価指針」に挙げられた項目についての、環境影響の最小化を代替案の基準とするのが、客観性があると考える。

環境影響の調査が行われる前に、これらの項目の影響を判定できるかどうかは、既存の同様の事業の環境調査の知識に基づくことで、大きな意味では可能と考える。

 (2)持続可能な治水事業への転換については、徳島の社会がもつ力に適合した技術の事業とすることを代替案の基準とすることが、客観性があると考える。

・徳島に現在、将来共に存在する治水技術であること。

・徳島にある材料で、大災害時に即座に入手可能な材料で行われる治水技術であること。

・維持管理費が、将来世代の負担にならないこと。

などの視点での代替案の基準が考えられる。

 (3)持続可能な吉野川流域への転換については、吉野川流域全体の持続可能性に配慮した基準が必要である。吉野川流域全体の健全な水循環の構築がこれからの大きな課題とな る。それを、将来阻害するようなことがない代替案の基準が考えられる。

 (4)情報公開と市民参加による合意形成を可能とする代替案は、市民の要望を十分に反映した代替案とすることを基準とすることである。

 

(2)代替案設定の20の基準

 代替案設定の基本哲学から基準を考えた結果、以下の表に示すように、代替案設定の20の基準を作成した。この基準は、具体的な代替案の作成の中で、検証されるであろう。

【1】環境アセスの環境要素と基本条件

 1.環境の自然的な構成要素の良好な保持      →第十堰現況の保全、改良

  巨大な貯水池(水質悪化、ヘドロの堆積、生態系の分断・喪失)をつくらない

   (1)大気環境

(2)水環境

(3)土壌環境・その他の環境

2.生物の多様性の確保及び自然環境の体系的保全  →第十堰現況の保全、改良

(4)植物

(5)動物

(6)生態系

 3.「人と自然との豊かな触れ合い」        →現状よりさらに豊かにする

 (7)景観の持続

(8)景観の改善

(9)触れ合い活動の場 自然の贈り物は工学的に代償できない

 4.「環境への負荷」               →負荷の最小化、改良

  (10)廃棄物等

  (11)温室効果ガス等

【2】治水と基本条件

          →環境負荷を最小にする治水案

(12)想定を越える自然災害や事故(地震、津波などの自然災害、故障・誤作動等によ    る被害)に対しても安全な、より単純な技術(堤防強化や固定堰)

(13)持続可能な治水工法

(14)経済効果(費用対効果)/環境負荷が同じなら工事費、維持費が安い方がよい

(15)既往施設の有効利用 /現堰維持、補修、堤防補強に配慮

(16)総合性(上下流のバランス、社会的対応の流域全体のソフト治水への配慮)

 【3】その他の基本条件

(17)新規利水を求めない直轄河川事業になったことの反映

改築位置を上流とすることができるようになった。

  (18)工期/工期は短い方が良いが絶対条件ではない。岩津や上流域の堤防が未改修     であるため、当分の間は計画高水流量が流下しない。

  (19)堰と徳島環状線の道路橋との関係

堰と橋の合併は不要。堰建設位置が13kmの地点であるときのみ考慮

(20)合意形成/情報公開、市民意見の反映により市民から広く受け入れられること

 3. 代替案の選択肢の設定

 市民代替案の理想な姿として、先に述べた基本的な考え方及び基本条件をより多く満たすには、具体的にどの様な代替案(現堰補修を含む)とすべきかを検討する。

(1)環境に対する影響と代替案

 代替案を考える上で、環境に与える根本的な要素は次の3点である。

(1)改築位置をどこにするか、現堰を中心に上流、下流など、どの位置で改築するか。

 (改築位置により、貯水量が大きく異なる)

(2)どのような構造形式の堰とするか、例えば固定堰(直堰または斜め堰)とするかあるい は可動堰(部分か全体か、引き上げ式か転倒式かなど)とするか。

(3)堰の貯水位は現状のままか、ある程度切り下げるか。

 建設省が主張しているような護岸に多自然型工法を採用することや魚道を最新式の構造にすること、あるいは巻き上げ機を桁下に隠して見かけを良くするといったことは、どのような代替案を環境面から選択するかをあらかじめ適切に検討した後に、当然行われるべき最低限の対応でしかない。

 環境に対する影響を回避・低減するには、環境庁の「基本的事項」で述べられているように「建造物の構造・配置のあり方、・・・等を含む幅広い環境保全対策を対象として・・・・比較検討する」ことが重要である。環境影響の回避・低減が最優先事項であって、代償措置はよほどの明確な理由がない限り許されないとするのが、環境アセス法の規定であることを、十分に認識する必要がある。

 第十堰建設審議委員会で行われた代替案の検討は、こうした検討が不十分であり、そのことが、可動堰案に対する市民の合意が未だ得られていないことの根本原因の一つであると考えられる。

(1)改築位置が環境に与える影響

 ○貯水池の大きさ

 改築位置を上流にすると貯水池が小さくなり、下流にするとその逆になる。貯水池が小さいほど、水質が改善され、生物にとってよりよい環境となる。逆に貯水池が大きくなると、水の滞留時間が増え、水質悪化、鮎などの生物の遡上・降下に悪影響が生じる。

 ○汽水域、浅瀬の消滅

改築位置を下流にすればするほど、現第十堰の下流に広がる汽水域がより多く消滅する。さらに堰下流の浅水域が減少し、入退潮量の減少による環境悪化(シジミへの影響)も大きくなる。

(2)堰の構造が環境に与える影響

 堰の構造を固定堰とするか可動堰とするかによって、次のような環境上の著しい差異が生じる。

 ○固定堰によってできる環境

 ・堰部分を自然河川に存在する一種の早瀬(急流)の環境とすることが可能で、魚類などの移動に対する悪影響を低減することができる。

・堰上流の河床低下を防止できるため、大量の水を貯めることがなく可動堰より水質の悪化が少なくなる。

・川の流れに溶け込み一体感のある景観とすることが可能であり、美しい川の風景を保全できる。さらに、堰そのものを人と自然のふれあい空間とできる。

 ○可動堰によってできる環境

・人工の巨大な滝ができ、生物の移動は不可能であることから、必ず魚道を設ける必要が出てくる。また、機械的に水をせき止め、川を切断するため、川の美しい流れにとっての異物となり、景観上ダメージが大きい。

・水循環が断たれるため、もはや河川としての環境は維持できず、湖の生態系に変化し、川が川でなくなる。

 ・河床が低下するため、大量の水が滞留し水質悪化などの原因となる。

 ・可動堰による河口堰は、水質悪化、水産資源の激減などの環境破壊を生じている事例がほとんどである。

 ・機械設備を保護する必要や危険があるため、人の立ち入りは制限される。

(3)堰の高さが環境に与える影響

・堰の高さ(貯水位)が高くなると、貯水量が増大することによって水質に及ぼす悪影響が増大し、堰上下流での落差が大きくなることによって、生物の移動に障害が発生する。したがって、堰の高さは低いほど、環境に対する影響は少ない。

(2)治水問題と代替案

(1)堰位置と洪水位

 河床(基礎部となる)の高さは、下流に向かって低くなる。しかし、堰上流の水位は旧吉野川に分水できる高さとする必要があるため、一定の高さを保つ必要がある。このため、堰位置を下流にするほど堰全体が大きくなり、流水に対する阻害となって治水上危険となる(資料4−1:「堰位置と堰高、水位の関係図」参照)。なお、可動堰と固定堰では建設位置の選定に次のような違いがある。

 

○可動堰の建設位置

建設省によると、可動堰は堰柱があることや、扉が正常に開閉できる必要があるため、河道、河床が安定した地点に設ける必要があり、建設位置は13km地点が最適としている。

 ○固定堰の建設位置

固定堰は、一種の床止め(河道を安定させる機能を有する)と考えられる。床止め工は、河床の異常低下の防止や河道が不安定であるなど治水上問題がある箇所に、その治水問題解決のため設置される。したがって、固定堰は治水上の問題解決の目的をかねて設置する方が、より費用対効果が大きいことになる。具体的には、現位置付近に設置すると、河道が安定し蛇行現象による深掘れなどを防止できる。また、固定堰は下流に設けると先に述べたように堰高が大きくなり、洪水位を上昇させることなど治水上不利であるから、改築位置は上流ほどよい。

 固定堰の建設位置は、代替案の検討には重要なので、位置と計画高水位との関係を検討しておくことが必要となる。

計画高水位を上回れば、それに対応して、堤防などの嵩上げや引き提などによる治水対策が必要となる。計画高水位を下回れば、治水対策が低減される。

堰の天端高さを5.1mとした場合の堰(固定堰)の位置と水位の関係

改築位置 16km地点水位 計画高水位を上回る高さ
13.0km(堆砂考慮) 15.64m 2.54m
14.2km 13.52m 0.42m
15.0km 12.80m −0.30m

表中の数値のうち改築位置が13.0kmおよび14.2km地点の場合の16km地点水位は、建設省資料による。改築位置を15.0m地点とした場合の水位は、建設省資料等からの推定値である。

 

 下流13.0kmでの固定堰は計画高水位を2.54m上回り、大規模な治水対策を必要とする。上流15kmの固定堰案では、計画高水位を約0.3m程度下回り、治水対策は大幅に低減することとなる。 

(2)堰の構造(可動堰と固定堰の違い)と堰上げ対策

 建設省が現堰を改築する理由としている3つの治水問題(堰上げ、老朽化、深掘れ)のうち、堰上げについては、固定堰と可動堰では異なった対応となる。

 可動堰の堰上げ対策は、洪水時に巨大なゲートを引き上げることによって、堰上げがないようにする機械的な方法であり、故障や操作ミスによりゲートが上がらないときには、堰上げによる大災害が生じる危険性がある。

 固定堰の堰上げ対策は、堰上げが生じても治水上問題のない位置、堰高に固定堰を建設するか、あるいは、堰上げが生じても堤防補強により治水上問題とならないようにする、機械に頼らない安全性の高い方法である。

 洪水による堰上げから生命や財産を守ることは、固定堰でも可動堰でも可能であるが、一般的に可動堰は建設及び維持の経済性に問題があり、一方固定堰では堤防補強に必要な土地の買収が必要になる場合がでてくる。

(3)持続可能な治水事業と堰の構造

 今回の改築事業は、頻繁に繰り返される氾濫などに対して緊急に治水効果を発揮させるものではなく、150年に一度の洪水に対応するという遠大な計画であることから、先に設定した基本条件である持続可能な治水工法かどうか、想定を越える災害(地震、異常洪水、津波)、経済・社会状況の変化などに対応できるかという視点の判断が重要になってくる。

 固定堰の特徴は、単純な構造物であり維持管理が容易であること、故障など不慮の事故が考えられない等、地元市民が永続的に管理負担ができる持続可能な治水事業としての堰である。

 これに対して、吉野川のような巨大な河川に可動堰のような維持管理の難しい構造物を造った場合、将来永続的に巨額の維持費と専門の職員を配置し管理する必要がある。また可動堰が老朽化しやすく短期間で更新が必要な電気機械設備を抱えるという面でも、可動堰は持続可能な治水工法とは考えられない。

(4)斜め堰(現堰維持を含む)か直堰かについて

 現堰は斜め堰であるため、河道を安定させるという床止めとしての機能がうち消され、右岸の深掘れ対策が必要になるのだとすれば、固定堰で改築する場合は、下流に直角の堰すなわち直堰とすれば、蛇行による右岸深掘れ問題を同時に解決することが可能である。

 ただし、斜め堰(現堰)については、斜めであるため堰が長くなっていることで洪水を幅広く分散・越流させるため、堰上げが小さくなることや、斜め堰により河原、瀬や淵など多様な環境が生まれているという優れた特徴もある。

 このことから、全面改築の場合においては、改築位置を考慮して直堰とすることが有利である。現堰を維持する場合は深掘れ対策が必要になるが、斜め堰の利点を活かすことやこれまで育んできた歴史や文化を継承することができる。

(3)代替案の選択肢の設定

 建設省が提示した代替案に、上記で述べたような環境面と治水面を考慮したよりよい代替案を加えた環境アセス法上の代替案をまとめると、35頁の「図(代替案の選択肢)」に示す通りとなる。

 

 代替案は建設省が現堰の改築理由とする3つの治水問題をどう評価し、それにどのように対応するかの違いで、現堰維持・補修案と現堰改築案という2つのカテゴリーに大きく分かれる。

 (1)現堰維持・補修案

 第1章で述べたように、建設省と吉野川シンポでは現堰に対する評価が大きく異なっている。吉野川シンポは250年余り堰が存在したきたという歴史的事実により、建設省が指摘するような改築に至るほどの治水上の問題はないと判断し、詳細な検討を行った上で、対策は現堰や堤防の点検補修(補強・改善)で可能とする代替案を提案している。

 さらに現堰の歴史的・文化的価値を正しく評価し、その上で先祖から受け継いできた資産を将来に向けて継承していくという考え方に立脚する代替案である。

当会としては、吉野川シンポのこうした考え方やそれに基づく代替案は、十分に説得力のある妥当な代替案であると判断する。また、環境アセスメントの代替案としては、ノー・アクションに近いものも、選択肢となりうると考える。

 したがって、このカテゴリーにおいて、われわれは以下の2つの代替案を、当会の代替案として設定する。

○「従来通りの現堰の修理維持案」(図「代替案の選択肢」における(10)

○「現堰補修+堤防補強案」(同図における(9)

 (2)改築案

 改築案は、現堰のもつ歴史的な価値を十分に認識し、現堰及び周辺環境をできるだけ持続させ、さらにはよりよくするという可能性を構想する案とする。

 現堰改築案は、建設省から可動堰案を含め5案が提案されている。しかしながら、先に述べたように、建設省の代替案の比較・検討は不十分である。特に、固定堰案での改築位置が13km地点であったり、現位置での改築案であっても斜め堰かつ現堰上でするため施工が困難であるといった問題があり、環境アセスメント上の代替案とするには不適である。

 市民アセスの会としては、改築案の中での代替案として、まず固定堰による改築を考える。それは、先の環境面と治水面の代替案の設定を満たす案であると判断されるからである。さらに、立地点との関連で、固定堰案は3つの案として、以下のように設定されることになる。なお、堰の向き(直堰とするか斜め堰とするか)は、右岸深掘れ等を防止し、河道を安定させるため、下流に直角方向(直堰)とする。

○「現位置上・直堰+堤防補強案」(図「代替案の選択肢」における(6)

現堰上で直堰へと改築し、堤防を補強する案

○「現位置下・直堰+堤防補強案」(同図における(7)

現堰直下流の14.2km地点で、直堰に改築し、堤防を補強する案

○「直上流・直堰案」(同図における(8)

現堰直上流の15km地点付近で、直堰に改築し、他方で現堰を一部保存する案

 

 代替案の選択肢 (図版:第十堰事業位置概要図参照)


  第十堰治水事業  

 現堰 改築  現堰補修案  現堰維持案

 

(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9)

 

 

(10)

 

堰の位置   13km  14.5km 14.8km 14.2km 15km 14.5km

  

建設審議委員会で検討された代替案の選択肢は限定されている。

環境負荷最小化に向けアセスの代替案は幅広い選択肢から選択する。

 4. 市民アセスの会代替案の選定

(1)代替案2案の選定について

 

 前節で、建設省代替案4案以外に、当会は新たに5案の代替案を設定して、計9案の代替案を選択肢とした。当会としては、これら5案は、建設省代替案と比較すれば、全ての案がより環境影響が小さいと考えている。しかし、その中でもさらに環境影響の小さいものに絞り込んで、最終的に2案を、当会の代替案として選択することとした。

 当会の代替案のうち、改築案の3案に関しては、次のように判断した。まず、「現位置上・直堰+堤防補強案」の場合、現堰上での改築は施工が他の固定堰案に比べて困難であり、また、堰上げ問題が解消できないため、堤防補強が必要になる。「現位置下・直堰+堤防補強案」の場合は、施工は最も容易であるが、やはり堰上げ問題が解決しないため、堤防補強が必要である。「直上流・直堰案」は、上流に位置するため堰上げ問題を解決でき、堤防補強が不要となる。環境面では、貯水量を最も減少させる案であることを評価し、また、改築案の中でこの案のみが唯一現堰の一定程度の保存が可能であることも評価した。以上のような判断から、当会は、最終的に「直上流・直堰案」(以下、「直上流固定堰案」と表記)を選択した。

現堰補修案については、現堰に関する治水上の評価が建設省と異なるとはいえ、現在の第十堰周辺の環境の現況を最重要視する限り、明らかに環境影響の少ない案であるため、適当であると考え、代替案として選択した。

最後に、ノー・アクションとしての現堰維持案は、今回の当会の代替案には含めないことにした。なぜなら、現時点では、先の2つの代替案によって、環境影響がかなりの程度、

回避・低減できると予測したからである。しかしながら、今後のアセスの調査、予測、評価が進行する中で、いずれの代替案であっても、重大な環境影響が生じることが判明するようなことがあれば、当然その時点で、現堰維持案が復活する可能性は存在する。したがって、広い意味での代替案という観点から言えば、当会は、可能性としては、常に第3の代替案として、現堰維持案を想定していると言えるのである。

(2)代替案2案の概要

 直上流固定堰案(「第7章、1.代替案の提案、(3)直上流固定堰案の概要」参照)

 現堰直上流(15km付近)で直堰に改築する案である。現堰の果たしている2つの機能のうち、分水機能を現代土木工学の設計に基づき改築する青石張りの直上流の新堰(堰天端:AP4.5〜5.1m)にもたせ、潮止め機能を現堰を切り下げ保存した青石積みの保存堰(堰天端:AP2.5m程度)が果たす、2m程度の落差の2段堰案である。  この案の特徴は、歴史的な存在としての現堰を河床低下が生じる以前の高さまで切り下げて潮止め堰として伝統工法に基づき保存する点にある。新堰と保存堰の2段構成により、

川の流れや、湛水量をより自然な環境に近づける計画である。

 治水面では、15km位置の固定堰とすることで堰上げ問題を、直堰とすることで深掘れ問題を解決している。

 

 現堰補修案(「第7章、1.代替案の提案、(2)現堰補修案の概要」参照)

 建設省によれば、現堰は老朽化が著しく、堰が流失する危険があるとされている。しかし吉野川シンポは、現地を詳細に調査すれば老朽化や損壊は補修を怠っている部分に発生しているもので、きちんと補修を行っていけば堰は維持できると主張している。

 現堰補修案では、当初計画的に、堰北端から魚道まで、建設省の未補修部分である堰長の約2割程度の部分を、強化し、魚道も改善する計画である。

 青石で覆うなど景観面での改善も併せて行い、その後は、堰の維持補修をその時々の財政状況やその時代に利用できる資材・技術などにあわせてベストの工法で環境負荷の最小化に配慮しながら250年の歴史ある現堰を存続させる計画である。治水面では、堰上げに対しては堤防補強、深掘れに対しては根固め工事などにより治水対策をする案である。

以上が、市民アセスの会代替案である。次の第5章において、主として治水事業としての評価、また第6章において、環境面からの評価を行い、これら2つの代替案の妥当性を具体的に検証する。

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